リハビリテーション部門における令和2年度診療報酬改定のポイント
2020年4月1日より診療報酬の改定が行われ、多くの病院・施設等で対応に追われていると思います。
病院によっては、

各所属長は目を通して必要箇所は報告するように
と部門ごとに一任されているところもあると思います。

一任されても少し不安だな…
とても重要な項目なので、しっかりと理解しておきたいですよね。
ですが厚生労働省から告示される文章は言い回しや表現が独特で少しわかりにくい。。。
ここでは、私が勤務している病院で実際に対処した内容について
私が調べたことを中心に、かいつまんで説明していきたいと思います。
令和2年度診療報酬改定のポイントとしては
言語聴覚士のリハビリテーション料算定追加
チーム医療における管理栄養士の追加
回復期及び地域包括ケア病棟の実績指数改定
外来リハビリテーション診療料の緩和
運動量増加機器加算の新設
などが挙げられます。
他にも改定ポイントは多々ありますが、ここでは割愛させて頂きます。
いや、細かい所まで詳しく知りたい!という方は、皆様ご存じの
PT・OT・STネットという素晴らしいサイトがありますので
そちらでご確認して頂けると幸いです。

引用元:PTOTSTネット
お役所様が言いたい事を代弁すると

ちゃんとリハビリやってる所は加算しますよ!

なんちゃってリハビリをしている所は厳しくしますよ!
ということだと思います。
今回は、内容がボリューム満点になってしまいましたので、シリーズ化してご説明したいと思います。
第一回目は『高度急性期リハビリテーションの充実』です。
高度急性期リハビリテーションの充実
ここ最近の傾向としては、回復期リハがどんどん厳しくなる一方、急性期の特に廃用の予防といった観点のアプローチに対する加算が目立っていると思います。
また、近年の傾向として『チーム医療』に対する加算が充実している点が挙げられます。
ADL維持向上等体制加算から始まり
現在は排尿ケアチームや褥瘡ケアチーム
今回の改定では嚥下チームにもしっかりと加算がされています。

これからは管理栄養士の役割が重要になるかも…
ICU入室直後からリハビリテーションや栄養管理をしっかりすれば加算しますよということですね。
それが
・早期離床・リハビリテーション加算
・早期栄養介入管理加算
です。
これは、平成30年の診療報酬改定で新設された時と同様「早期離床+早期からの積極的なリハビリ実施」が根底にあります。
特定集中治療室における早期離床リハビリの効果には、次の2つが取り上げられます
よって、急性期で行われているリハビリを、高度急性期にも導入する狙いがあるのです。
出典元:中央社会保険医療協議会(中医協) 平成29年度入院医療等の調査
ですが上記資料から読み取れるように、まだまだ特定集中治療室でのリハビリ実施割合は高くありません。
今まではリハビリ室でリハビリをやって点数を算定するのが主流でしたが、
これからは各病棟にセラピストが専従し、病棟リハが主流になってくるのではないかと思います。
これは協会側のリハビリテーション業務の職域拡大も一因となっているのでしょうか。
特定集中治療室管理料
特定集中治療室管理料(1日につき)
以下、厚生労働省HPより抜粋
注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関、必要があって特定集中治療室管理が行われた場合に、当該基準に係る区分及び当該患者の状態について別に厚生労働大臣が定める区分(特定集中治療室管理料2及び4に限る。)に従い、14日(別に厚生労働大臣が定める状態の患者(特定集中治療室管理料2及び4に係る届出を行った保険医療機関に入院した患者に限る。)にあっては60日)を限度として、それぞれ所定点数を算定する。
注2 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、15歳未満の重篤な患者に対して特定集中治療室管理が行われた場合には、小児加算として、当該患者の入院期間に応じ、次に掲げる点数をそれぞれ1日につき所定点数に加算する。
イ 7日以内の期間 2,000点
ロ 8日以上14日以内の期間 1,500点
算定の対象患者
特定集中治療室管理料の算定対象となる患者は、次に掲げる状態にあって、医師が特定集中治療室管理が必要であると認めた者であること。
イ 急性呼吸不全又は慢性呼吸不全の急性増悪
ウ 急性心不全(心筋梗塞を含む。)
エ 急性薬物中毒
オ ショック
カ 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
キ 広範囲熱傷
ク 大手術後
ケ 救急蘇生後
コ その他外傷、破傷風等で重篤な状態

ここまでは病院の入院管理料のお話なので、リハビリテーション部門としてそこまで把握していなくても問題ないかと思います。

どちらかというと院長や看護部長の管轄かな…
早期離床・リハビリテーション加算
早期離床・リハビリテーション加算とは、
入室した日から起算して14日まで1日につき500点
特定集中治療室管理料に加算できます。
以下、厚生労働省HPより抜粋
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た病室に入院している患者に対して、入室後早期から離床等に必要な治療を行った場合に、早期離床・リハビリテーション加算として、入室した日から起算して14日を限度として500点を所定点数に加算する。
この場合において、同一日に区分番号H000に掲げる心大血管疾患リハビリテーション料、H001に掲げる脳血管疾患等リハビリテーション料、H001-2に掲げる廃用症候群リハビリテーション料、H002に掲げる運動器リハビリテーション料、H003に掲げる呼吸器リハビリテーション料、H007に掲げる障害児(者)リハビリテーション料及びH007-2に掲げるがん患者リハビリテーション料は、算定できない。

疾患別リハビリテーション料との併用は出来ないからね
心大血管疾患リハビリテーション料を算定していない病院は朗報?!
病院によっては心大血管疾患リハビリテーション料を算定していないところもあると思います。

心リハは敷居が高いんだよな

でも、うちもDPC病院で循環器の売り上げが悪いから
リハの出来高で何とかカバーしてくれ!!
ICUなどの特定集中治療室では早期離床がとても重要ですが、心大血管疾患リハビリテーション料を算定していない病院では、なかなか理学療法士が介入出来ないといった状況が生まれてしまいます。
そこで、『早期離床・リハビリテーションチーム』を設置することで病棟でのリハビリが可能となり、且つ特定集中治療室管理料に500点が上乗せ出来ます。

リハでいったら2単位分の算定になるじゃないか!
早期離床・リハビリテーション加算の施設基準
早期離床・リハビリテーション加算を算定するには以下の条件が必要となります。
以下、厚生労働省HPより抜粋
(1)当該治療室内に、以下から構成される早期離床・リハビリテーションに係るチームが設置されていること。
ア 集中治療に関する5年以上の経験を有する専任の医師
イ 集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を5年以上有し、適切な研修を修了した専任の常勤看護師
ウ 急性期医療を提供する保険医療機関において5年以上従事した経験を有する専任の常勤PT又は専任の常勤OT
(2)当該保険医療機関内に複数の特定集中治療室が設置されている場合、(1)に規定するチームが複数の特定集中治療室の早期離床・リハビリテーションに係るチームを兼ねることは差し支えない。
(3)(1)のアに掲げる専任の医師は、特定集中治療室に配置される医師が兼ねることは差し支えない。また、特定集中治療室を複数設置している保険医療機関にあっては、当該医師が配置される特定集中治療室の患者の治療に支障がない体制を確保している場合は、別の特定集中治療室の患者に対する早期離床・リハビリテーションに係るチームの業務を実施することができる。
(4)(1)のイに掲げる集中治療を必要とする患者の看護に係る適切な研修とは、国又は医療関係団体等が主催する600時間以上の研修(修了証が交付されるもの)であり、講義及び演習により集中治療を必要とする患者の看護に必要な専門的な知識及び技術を有する看護師の養成を目的とした研修又は保健師助産師看護師法第37条の2第2項第5号の規定による指定研修機関において行われる集中治療を必要とする患者の看護に係る研修であること。
(5)(1)のイに掲げる専任の常勤看護師は、特定集中治療室管理料1及び2を届け出る治療室に配置される1の(2)の看護師が兼ねることは差し支えない。また、特定集中治療室を複数設置している保険医療機関にあっては、当該看護師が配置される特定集中治療室の患者の看護に支障がない体制を確保している場合は、別の特定集中治療室の患者に対する早期離床・リハビリテーションに係るチームの業務を実施することができる。
(6)(1)のウに掲げる専任の常勤理学療法士又は専任の常勤作業療法士は、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料又は脳卒中ケアユニット入院医療管理料を届け出た病棟(以下「特定集中治療室等」という。)を有する保険医療機関で5年以上の経験を有すること。ただし、特定集中治療室等を有する保険医療機関での経験が5年に満たない場合は、回復期リハビリテーション病棟に専従で勤務した経験とあわせて5年以上であっても差し支えない。
(7)特定集中治療室における早期離床・リハビリテーションに関するプロトコルを整備していること。なお、早期離床・リハビリテーションの実施状況等を踏まえ、定期的に当該プロトコルの見直しを行うこと。
(8)区分番号「H000」心大血管疾患リハビリテーション料、区分番号「H001」脳血管疾患等リハビリテーション料又は区分番号「H003」呼吸器リハビリテーション料に係る届出を行っている保険医療機関であること。

難しくてよくわかりません

簡単に要約するとこうなるね
集中治療に関する5年以上の経験且つ研修を修了した専任の看護師
急性期を5年以上経験した専任PTまたはOT

まだまだ詳細があるよ
早期離床・リハビリテーション加算は、特定集中治療室に入室した患者に対し、患者に関わる医師、看護師、理学療法士、作業療法士又は臨床工学技士等の多職種と早期離床・リハビリテーションに係るチーム(以下「早期離床・リハビリテーションチーム」という。)による以下のような総合的な離床の取組を行った場合の評価である。
ア 早期離床・リハビリテーションチームは、当該患者の状況を把握・評価した上で、当該患者の運動機能、呼吸機能、摂食嚥下機能、消化吸収機能及び排泄機能等の各種機能の維持、改善又は再獲得に向けた具体的な支援方策について、関係学会の指針等に基づき患者が入室する治療室の職員とともに計画を作成する。
イ 当該患者を診療する医師、看護師、理学療法士、作業療法士又は臨床工学技士等が、早期離床・リハビリテーションチームと連携し、当該患者が特定集中治療室に入室後48時間以内に、当該計画に基づく早期離床の取組を開始する。
ウ 早期離床・リハビリテーションチームは、当該計画に基づき行われた取組を定期的に評価する。
エ アからウまでの取組等の内容及び実施時間について診療録等に記載すること。

これも要約するとこうなるよ
計画を基に48時間以内に早期離床の取り組みを開始
取り組みを定期的に評価
これらの内容及び実施時間を診療録に記載する
これらの施設基準をクリアすれば、届出をすることによって早期離床・リハビリテーション加算が算定できるようになります。
(新)早期栄養介入管理加算
新設された加算です。加算点数が高い分、施設基準が少し厳しめですね。
出典元:厚生労働省HP
以下、厚生労働省HPより抜粋
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た病室に入院している患者に対して、入室後早期から経腸栄養等の必要な栄養管理を行った場合に、早期栄養介入管理加算として、入室した日から起算して7日を限度として400点を所定点数に加算する

ICU入室後48時間以内に栄養投与を開始した場合の死亡率低下はエビデンスのあるものだからな

それに対して今回は加算がついたわけだ。しっかり頼むよ
出典元:中央社会保険医療協議会(中医協)
SOFAスコア(Sequential Organ Failure Assessment score)とは、呼吸・循環系や中枢神経系、肝臓、腎臓および凝固系といった臓器障害を簡便に点数化してその合計点で重症度を判定することを目的に作成されたものです
SOFAスコアは重症患者の集中治療を行うICUで使用されています。

看護は専門外なので、いつも参照させて頂きます
詳しくは下記看護roo!さんのHPをご参照下さい。看護の事はもちろん、医療機器の事まで詳しく説明しています。
いつも参考にさせて頂いております。

引用元:看護roo!HP
施設基準
話が少し逸れたので、栄養管理の話に戻ります。
施設基準は以下になります。
特定集中治療室における栄養管理の経験を3年以上有すること
管理栄養士の数は、当該治療室の入院患者に対し10対1以上であること。

研修を修了した管理栄養士が必要になるのか

加算はともかく早期からの栄養管理は重要だ!今一度徹底させよう。
研修を修了した管理栄養士とは、日本栄養士会や日本病態栄養学会、等が主催する栄養サポートチーム担当者研修会に参加し、修了証書を発行してもらう必要があります。
すぐ加算を算定出来るかは別として、ICU入室後すぐに医師・看護師・セラピスト(PTOTST)栄養士、等が協力して栄養管理する事が大事ですね。
まとめ
今回は第一回として
『高度急性器リハビリテーションの充実』
について説明しました。
前回の診療報酬改定を上方修正し、新たに栄養管理が追加された形の改定になったんじゃないかなぁと思います。
今回の改定ポイントは 『管理栄養士』 『言語聴覚士』 の早期介入ですね。
今まであまり日の目を見ることのなかった職種が、ついに評価されたといった感じですね。
しかしながら近年の傾向として、
HCUは増加傾向
にあります。
よって、今回の特定集中治療室管理料に加算される項目が、ハイケアユニット入院医療管理料に追加されると、本当の意味での高度急性器医療の充実になるんじゃないかと思います。
HCUに携わる機会がある身としては、是非令和4年度にぜひ追加してもらいたいですね。

医療費(財源)の兼ね合いもあるから…
まあ、無理だと思いますよ。。
…。
次回は
『言語聴覚士のリハビリテーション料算定追加』
についてお話していきたいと思います。
最後まで閲覧頂きありがとうございました。

ありがとうございました
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